タイ王国のパンクな「地獄寺」:ワット・パイ・ロン・ウア

 

  タイ王国には有名な「地獄寺」がある。人の死後、生前の悪行によって、「地獄でどんな大変な目にあうか」を各種漆喰の人形で表した寺である。

 

 タイ人にとっては、「良い学びの寺」であり、異邦人にとっては、「ぶっとんだ世界観の地獄ランド」として好評を得ている。

 

 パイ・ロン・ウア寺、タイ語で「ワット・パイ・ロン・ウア(Wat Phai Rong Wua)」がその地獄寺の名称だ。

 バンコクから北西に80キロ、車やバイクを一時間半ばかり走らせたスパン・ブリー県の郊外に、パイ・ロン・ウア寺は位置する。周囲には特に何もない地域であり、多くの人にとって、パイ・ロン・ウア寺を参観する以外には、この地に足を運ぶ理由はない。

 

 パイ・ロン・ウア寺に到着すると、数々の可笑しな地獄絵図が漆喰の人形で表現されているのだが、ここを参観するタイ人達は意外にも真面目な顔でいるので、異邦人といえども露骨に笑ったりしてはいけない雰囲気がある。

 実のところ、笑いをこらえるのに苦労する像がいくつもあるが、 この入境が無料のパイ・ロン・ウア寺が広い敷地を持ち、多くの像を作れるだけの資金があるということは、この寺に寄進する信者が少なくないことを表している。

 

 タイ人の中にも、「この寺はやばいな」と客観的にその可笑しさを理解している人々もいれば、「お寺の伝えてくれる有難い教えなのだ、真面目に参観しよう」と敬虔な仏教徒としてここを訪れている人もいる。しかし、幾つかの像の前では、どんなに敬虔なタイ人仏教徒でも、「これはどうかな」という表情をしていることもある。

 寺の中央部には「地獄エリア」があり、多くの地獄に落ちた人々と、地獄の鬼達が並ぶ。鬼達は人々を釜茹でにしたり、鉈で裂いたり、鋸で切り刻んだり、煮え湯を飲ませたり、棍棒で叩いたりとやりたい放題である。怪鳥は地獄に落ちた亡者達を食いちぎり、亡者達はエサ状態である。

 

 しかし、ありがたい仏僧には、地獄の亡者も鬼達も皆ひれ伏すという胡散臭い光景は、一応は仏教のブランディングのための寺であることが伺える。「こんな怖い地獄に落ちたくないでしょう、だったらお布施をたんまりしましょうね。我々が貴方のために祈っておきますよ」という論理だ。

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 中央部から外へと向かうと、このパイ・ロン・ウア寺で最も意味不明な現生での悪行エリアに突入する。ワニとトラに挟まれ困惑する男性、女性に馬乗りになり不敵な笑みを浮かべながら暴行する男性、白象の世話をするような男性、素っ裸の子供を棒で叩く女性、なぜか激しく脱糞する男性とその便を集める少年像など、次々に意味不明な世界が顔をのぞかせる。

 

 脱糞する男性の像には、「責任感がない」というキャプションがつくが、「なぜ責任感がないと外で激しく脱糞してしまうのか」という理由が全く見えない。「無責任な人」というよりも、ただの「可哀想な人」に思える。

 このパイ・ロン・ウア寺を訪れて、「より敬虔な仏教徒」となるか、「多くの仏教会派は、好き勝手なフィクションを売りにしている宗教ビジネスだ。」と思うかは、訪問者次第である。

 

 

 

 

フィクションとしては、面白いけれど。