遼寧省営口市:ゆるい街にも人情はある

 

 1年前の2015713日、中国は遼寧省の営口(いんこう)にいた。北京に住み仕事をしている10年来の友人に誘われ、実家のある営口を訪ねたのだった。営口を訪れる前に、私は一人、比較的親日な人が多く、また知日派の多い大連に立ち寄り、その足で営口へと向かった。

 大連から高速鉄道に乗り、営口東駅に降り立つと、そこは地方都市の駅らしく、駅の周囲には何もない場所であった。

 幸い、友人の親友が車で迎えに来てくれていたので、営口の街までタクシーで移動してぼったくられ、不快な思いをすることもなく、街の中心部に滑るように向かうことができた。

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 友人の親友は、政府関係の機関で働いており、平日の日中でも割と時間に融通の利くポストにあるそうで、平日の午後でありながら、そのまま「焼肉を食べに行こう」という流れになった。

 

 中国大陸の人々の接待の仕方は、日本と比べるとずっと情熱的である。食事に行けば食べ切れないほどにオーダーを入れて歓待してくれるし、常に何かリクエストはないかと頻繁に聞いてもくれる。日本人からすると、煩わしいほどに「あれはどう?これはどう?」と聞いてくるのだが、それは彼らにとっての歓迎の証なのだ。

 

 本来、友人の親友宅にお邪魔して宿泊するよう誘われてもいたのだが、新婚であるとのことなので、街中のホテルに投宿したいと希望を伝えた。

 

 すると、旧友の一人の家族の経営するしっかりしたホテルに連絡をとってくれ、普段の一人旅の時には泊まらないような、誰に見せても恥ずかしくない部屋に泊まらせて貰うことになった。

 

 ここで無理に「自腹で泊まりたい」と押し通せば、それは彼らにとって「遠慮されている」ということになり、「客人をしっかり持て成しきれなかった」という不快な思いをさせてしまうことになる。ここはありがたく厚意を受けとり、思い切り滞在を楽しむのが中国流の礼儀である。その分、彼らが日本にやって来た時には、それ相応の持て成しをしないといけないのであるが。

 

 目下、「子作りに励んでいる」という友人の親友夫婦の旦那は、「酒もタバコも抜いている」とのことで、焼肉屋では自分だけが麦酒をたしなむことになった。中国大陸の麦酒は「クリアな喉越し」と言えば聞こえはいいのだが、「やや水っぽい味」であることが多く、ベルギー麦酒のシメイなどが好みの自分には、物足りない味である。

 

 しかし、中国の友人たちの手前もあるので、さも美味そうに、遼寧省の地元の麦酒を数本空けるのが、客人としてのマナーなのであった。

 

 たらふく焼肉を食べ、麦酒ですっかり腹が膨れたところで、ホテルまで送り届けて貰った。その後、友人と親友夫妻は積もる話もあったのであろう、小一時間ばかり近所のお店に行っていた。

 

 彼ら3人は、ホテルに戻ってくるやいなや、「お腹すいた?」と聞いてくる。そんなわけは無いだろう。さっき焼肉をたらふく食べたばかりである。

 「まだしばらくしないと食べられないよ」と伝えると、残念そうにしている。

 

「あと2時間ぐらいしたら小腹が空くかも」と言えば、「ではその時に何が食べたい?」と聞いてくる。「羊肉串」と答えると、顔がパッと明るくなり、「分かった!羊肉串だね!2時間後に集合だよ」という具合だ。先ほど食事を済ませたばかりなのに、もう次の食事の話をしているのだ。

 

 

 その夜、羊の肉と麦酒がずっしりと胃袋の中を満たしていたことは、言うまでもないだろう。

食った食った