遼寧省営口市:見所が乏しい分、食事を大切に

 

 「中国は遼寧省の営口(いんこう)」を訪れた時のことを書いている。

 

 営口という街には、世界からの旅人を引きつけるだけのものは少ない。歴史のある旧市街というものもなく、日本軍が攻め込んできた時に撃退用に使われていたという、史跡として残る砲台を訪れてみても、どうにもパッとしないものであった。結果的に撃退できなかったからかもしれない。

 

 また、海辺は静かだが、その静寂には理由があり、「海遊びができるほどに透明度が高くはない」のが街の残念な雰囲気を増幅していた。

 中国の地方都市は、総じて交通の便が悪い。車がないとどこにも行けないのだ。北京や上海、深センのように、地下鉄網が発達し、さらに公共バスを乗り継いで行けばどこまでも行けるという大都市とは異なり、地方都市の交通の便はまだまだ悪い。

 車を出してくれた友人の親友夫婦は、とても気の良い東北人であった。しかし、彼らにしても、生まれ育った営口に愛着はあるものの、地元に見所が少ないことはよく認識しており、その分、「食事でもてなす」という方向に比重を置かざるを得なかったのであろう。「営口で一番立派な橋」を観に連れて行かれ、リアクションに困ったのも、いまとなっては良い思い出である。

 焼肉と焼烤(しゃおかお:串焼き系の料理全般を指す)で持て成してくれた初日に続き、二日目も地元の店を知り尽くした二人がアテンドしてくれ、昼にはしっかり重いものを、夜には自宅に招かれて市場で買い付けた蟹や海老などを振舞ってくれた。新婚夫婦らしく、家のドアには「喜ぶ」が二つ連結された「喜喜(しー)」の文字が見て取れる。また、中国では赤は婚姻の縁起を担ぐ際に用いられる色で、家中に赤いものが溢れていた。

 

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 彼らの暮らすマンションの小区(しゃおちゅー:通常は閉ざされた区画をこう呼ぶ)は、営口の中でも新しく高級な部類に入る地区であったが、やはりマス・プロダクションのマンション群であり、それぞれの建物に個性は感じられない。

 

 近隣にも似たような建物の乱立する地区があり、ドミノのように指で押したらバタバタと倒れていくのではないかというような幻想を抱く。