遼寧省営口市:お腹いっぱいで、再見

 

  「中国は遼寧省の営口(いんこう)」を訪れた時のことを書いている。今回で3回目。初日二日目、そして本日の内容。

 

 前日、夕食を早めに切り上げ、ホテルに戻る前にマッサージを3人の中国人の友人たちと一緒に受けに行った。かつて中国大陸ではマッサージは日本円にすると500円前後で受けられたものであるが、この十年の間に急激に人民元を切り上げ、行政が勝手に人件費も高騰させたために、1000円以下でマッサージが受けられる場所は少なくなっている。

 

 遼寧省の地方都市に過ぎない営口でも、正規でそこそこのレベルの按摩(あんもー:中国語では、そのまま「マッサージ」のこと)を受けたければ、100元以上はみておかなければならない。

 中国政府は2015年末あたりから人民元を切り下げ始めてはいるが、一度上げてしまった人件費を下げるのは容易ではない。昨今、ただでさえ景気が悪い中国大陸なのに、人民の不満に直結するような「人件費を下げる」という政策は、党の存続に関わる。

 さて、前夜の按摩のおかげもあり、三日目の目覚めは爽やかなものとなった。友人が「香港通行証」を作るというので、その役所のオフィスまで付いて行った。日本人は90日までの香港の渡航にビザは必要ないが、香港の所属する中国の人民は、香港に行くのに特別な「許可証」が必要だ。それがこの「通行証(とんしんじぇん)」と呼ばれるもので、戸籍はどこにあるか、仕事は何をしているか、年収はどの程度あるか、などとチェックをされることになる。

 

 「中国人が中国の一部に行くのに査証が必要」というのもおかしな気がするが、渡航の制限をしないと、物価の差異を活かしたビジネスをしようと、人民が香港やマカオに大挙してしまうのであろう。すでに人口700万人の小さな香港市場では、大陸からの買い付けによって、日用品から不動産にいたるまで、多くのものの物価が劇的に上がってしまっている

 元来、香港人は大陸人を見下している傾向があったが、近年のブームに乗って香港に押し寄せる大陸人の節度のなさに、香港人の大陸人に対する「嫌悪感」は年々高まってしまっているようだ。また逆に、「大陸人に対する香港人の態度の悪さ」も露呈するようになり、大陸人の側からも香港人に対して、ネガティブな感情を持つ者が増えている。

 

 端から見ると、「どちらも中国人」なので、彼らがいがみ合っているのは滑稽ですらあるのだが、中国では「地域ごとに嫌い合う」という文化や習慣が古くからあるようだ。「北京人と上海人」は相容れず、それ以外の地方の人々はこの二大都市の都会人を嫌い、「新疆人」はフーリガンのように漢民族に思われており、都市部の人々は農民工(出稼ぎ労働者)を見下し、かつて自分たちも文化大革命の時期には似たような境遇であった今日の北朝鮮の人々を嘲笑っていたりもする。

 

 また歴史的な理由や党の存続の正当化(こじつけ)から、「偉大なる中国の共通の敵:日本人」が深層意識に刷り込まれて続けてもいる。

 

  役所の外には、「市民の皆さんのためにサービスをします」「市民の皆さんがいつも心の中にあります」など、歯の浮くようなスローガンが掲げられていることが多いが、中国のスローガンとは、「今日は真逆の状況です」ということを吐露するものに過ぎない。

 

 よく目にする、「汚い言葉遣いをやめましょう」というスローガンは、罵詈雑言の好きな中国の人々が多いことを表している。また、役所では「賄賂を受け取るのをやめましょう」などという冗談のようなスローガンまである始末だ。つまり、「現状は賄賂を受け取り放題ですよ」ということだ。

 営口を後にする前に、この中国の地方都市にも出店していたスターバックスで、連日の重い食事に疲れている胃腸を休めるために、軽めの朝食を摂った。カフェ・ラテとデニッシュだ。スターバックスのカフェ・ラテが40元(一年前の為替では約800円)もした。

 

 日本の倍近い値段のカフェ・ラテをすすりながら、Kindleで少し本を読む。日本人である自分をも暖かく迎え、厚くもてなしてくれた中国人の友人たちへの感謝の気持ちが、静かに湧き上がってくる。いつの日か、日本に遊びに来てくれたならば、日本の素朴な良さと同時に、高齢化がすすみ、若い世代が大変な目にあっている現状を見てもらいたいと思う。

 

 お互いにバイアスのかかった日中のマスコミを介した情報ではなく、自分の眼で見て、肌で感じ、直接対話をすることが「大きな争い」を避けることになる。お互いに見ず知らずの人間をネット上で馬鹿の一つ覚えのように罵り合っているようでは、状況は悪くなるばかりだ。

 

 かといって、「日中の架け橋になる」などと大仰なことを考えなくてもよい。そうのたまう人間は、多くの場合、「そこの領域で儲けたいのです」と私利私欲を吐露しているに過ぎないからだ。政治家など「善良な市民を騙すこと」が仕事の人間には向いているかもしれないが、友人にはしたくないタイプだ。

 

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 スターバックスに迎えに来てくれた友人たちが、最後に昼食をと、また焼肉をたらふく食べさせてくれ、営口東駅まで送ってくれた。「これは」という見所は無かったが、三日間に3度も焼肉をご馳走してくれた。少なくとも友人たちの人情に触れ、お腹いっぱいの営口訪問であった。

本当に、よく食べた。