ヒグチユウコさんの作品を三冊ばかり

 

 ここ数年、画家・絵本作家のヒグチユウコさんが注目されている。その活躍は日本ばかりではなく、GUCCIとのコラボレーションなどで世界に及んでいる。最初はGUCCIのチルドレン・ライン向けのイラストレーションで協働し、ついにアダルト向けのラインもまず日本限定で販売されている。

 

 日本人は欧米のブランドが好きな人が多いので、「グッチとコラボしているヒグチユウコさん」と聞くと、もうそれだけで大変な人なのだという格付けになる。確かに大変な才能をもつ画家なのではあるが。

 GUCCIの商品はそれなりの「お値段」に設定されているので、誰でも気軽に手に入れられるものではない。

 

 ヒグチユウコさんの作品世界に気軽にダイブすることができるのは、やはり絵本であろう。これまでにすでに六冊の絵本と漫画が出版されており、さらにシール・ブックやポストカード・ブックなどを合わせると、十冊ほどが出版されている。

 

 今回はそのうち、絵本・漫画の六冊を系統分けし、そのうちの「連続する物語群」に属する3作品に触れてみたい。独立したお話である『ギュスターブ』『すきになったら』、絵日記・妄想日記的な漫画の『ボリス絵日記』は単独の話であるが、このうち『ギュスターブ』はいずれ続編が出て連続した物語の世界になるのかもしれない。

 

 

 20186月には、ギュスターブのショップもオープンしているほどヒグチユウコさんはギュスターブに入れ込んでもいるので、顔が猫で体がタコのような「ギュスターブ」と、なんだかよくわからない六本の手と一ツ目の生物「ひとつめちゃん」の物語はまだまだ始まったばかりなのだろう。

 では、連続する物語のうち、まず2014年末に刊行された『ふたりのねこ』である。

 

 この作品でヒグチユウコさんという作家の特異な世界観が明示された。可愛いだけでなく、ややグロテスクで、どこかシニカルで、でも愛情に溢れている世界観。

 主人公のニャンコはヒグチユウコさんのご子息(ぼっちゃん)のヌイグルミであるそうで、「ぼっちゃん」の為に描かれたとも取れる文章である。

 

 この『ふたりのねこ』でデビューしたニャンコは、その後続けて『せかいいちのねこ』『いらないねこ』と連続する作品世界で物語を広げ、深めていくのであるが、現実世界の「ぼっちゃん」が理解できる範囲での語り口となっており、『ふたりのねこ』『せかいいちのねこ』『いらないねこ』と順を追うに従い、次第に難しい表現に移行していくのも面白い。ディック・ブルーナのミッフィーの世界観のように永遠に16歳のミッフィーの視点ではないのだ。

 また、『せかいいちのねこ』『いらないねこ』と共に「子猫の死」という悲しいイベントも含まれている。絵本の中で死を扱うのはかなりデリケートな話題であるが、それを正面からしっかりと描いている。

 

 『せかいいちのねこ』は12章からなる物語である。絵本を紹介する月刊誌のMOEで12ヶ月に渡って連載されていたものが単行絵本として刊行されたもので、書き下ろしではない。「これだけ濃い世界を書き下ろすのは難しいだろうな」という読みがい、ボリューム感のある絵本である。

 

 巻末のモデルになった猫たちの紹介写真も可愛い。猫たちは自分たちがモデルになった物語がこの世にあるなど、知らないだろうけれど。

 さて、続く『いらないねこ』は、15章からなる物語。多くの人は、まずそのタイトルに内心ギョッとするのではないだろうか。作品を読んでいくと、そのネーミングの意図が分かるのであるが、この暗い毒を持つ言葉をタイトルにしたのは秀逸である。前作『せかいいちのねこ』というなんとも幸せなタイトルからのギャップが激しい。

 

 具体的な物語に触れるとネタバレとなってしまうので、まだ読んだことのない人は、ぜひ絵本を手にとってみて欲しい。ヒグチユウコさん、本格的なデビューから数年しか経っていないが、すでに間違いなく「今日の日本の絵本界を引っ張る重鎮」の一人である。

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 糸井重里さんとの対談から、ヒグチユウコさんの人となりを伺うこともできる。気になる方は、まずこちらもチェックすることをオススメする。20182月に愛されながら逝った糸井家の愛犬ブイヨンの魚化した絵もヒグチユウコさんは描いているが、流石の巧さであった。

 

ヒグチユウコさんの世界。@ほぼ日刊イトイ新聞

           
           

ヒグチユウコ さん、今後の作品にも期待